2024年03月22日
西川昌宏さん
東京・麻布台ヒルズに誕生した「ジェンテ ディ マーレ」に毎回ゲストをお迎えし、
それぞれの鋭い審美眼で選んだ銘品の魅力を語っていただく連載がスタート!
初回のゲストは、今年創刊70周年を迎える日本最古の男性ファッション誌
『メンズクラブ』の編集長、西川昌宏さんです。
長きにわたり世界のファッションに触れてきた西川さんが、「ジェンテ ディ マーレ」で注目した銘品とは…。
本題に入る前に、チルコロのベスト・オブ・ベストといえば、スウェット生地を用いたジャケットの存在は外せません。2009年秋冬シーズンの発表会ではじめて目にしたとき、「こんなにもきちんとした見た目なのに、これがスウェットなの!?」というギャップに驚かされました。なかでも真骨頂の転写プリントが用いられたシリーズは、現行の商品を見ても、織りなのか、プリントなのか見分けがつかないくらい…。当時の『メンズクラブ』でも、この革新的な技術をお届けしようと撮影を試みたのですが、なかなか伝わらず、結局、生地の裏面を見ていただくことでプリントであることを証明したのを覚えています。
――メンズジャケットの流れが軽さや薄さにシフトしているタイミングとも重なり、瞬く間に “楽ジャケ”のアイコンになったチルコロ1901。他がまねしようとも追いつけない独自性と技術力の高さに、西川さんも改めて感服したと言います。
チルコロのアイコン的存在を踏まえ今回私が注目したのが、このリネン74%×コットン26%のニットジャケットです。ほぼこの比率でしたら、リネンジャケットと言ってしまってもいいでしょう。布帛なら少し着ただけでシワシワになってしまうところ、このジャケットはリブ編みのニット地で仕立てられているため、その心配もなく気楽。カーディガンのように柔らかく、軽やかなところも気に入っています。
――日本の男性にリアルな情報を届けることを第一に、日々誌面づくりと向き合う西川さん。ひとつひとつのディテールを確かめる様子も、真剣そのもの。
今日はニットの上から羽織ってみましたが、ストレッチも程よく効いているのでとても動きやすい。もう少し季節が進んだら、Tシャツの上から羽織るとリネンの心地よさがより楽しめるでしょう。この品のよさならカジュアルにも、リネンシャツとのタイドアップにも活躍できることは間違いありません。イタリアブランドを日本市場に広げるには、シルエットが鍵を握ると言われています。チルコロは、どこよりもヒアリングを大切にするブランド。そういった柔軟性も、長く日本で支持されるゆえんなのだと思います。
銘品ブランドというとコンサバティブで、昔から同じものを作り続けているギアに近い印象があります。その点チルコロは、今の銘品ブランドだと思います。おしゃれは我慢という時代がありましたが(今もその心構えは、どこかで持ち合わせてはいたい)、こんなにも楽なジャケットを纏ってしまうと、なかなか元には戻れない(笑)。イタリアブランドらしい遊び心と革新的な技術力をもって、楽とエレガンスをここまでバランスよく融合しているところに、“洋服の未来形”を感じます。
――最後に、世界中のセレクトショップに足を運んできた西川さんに、「ジェンテ ディ マーレ」の印象を伺いました。
決してイタリアンクラシコではなく、あくまでも軸足はカジュアルに向いているところに魅力を感じます。今のメンズファッションの流れも、例えばイタリアブランド一辺倒でまとめるよりは、多彩な文化をミックスさせた装いが主流に。「ジェンテ ディ マーレ」には、タイドアップだけでなく、休日に使える服の両方が充実していますし、アスペジやセバゴといった骨太ブランドも揃っています。レディスもあるので、パートナーと訪れることができるのもポイント。まずもって、欲しいものが必ず見つかるのではないかと期待がもてます。
西川昌宏氏
1975年生まれ。アシェット婦人画報社(現ハースト婦人画報社)で女性誌の編集者を務めたのち。2003年にMEN’S CLUB編集部へ配属。
同誌副編集長を経て2019年より現職。MEN’SCLUBの原点である「トラッド」を改めて掲げ、好印象な大人のファッション、ライフスタイルを提案。
休日は愛犬との散歩でダイエットも兼ねリフレッシュしながら、新たなコンテンツアイデアを練る時間として活用している。